
仁和会理事長の松屋です。
子育ては、想像以上に笑いがあって、想像以上に悩みも多いもの。このコラムでは、保育現場や家庭での日常から感じたこと、役立つ情報、ちょっとした気づきをお届けします。
突然ですが、1歳半頃から始まる「イヤイヤ期」体験したことがある方はわかると思いますが、本当に大変ですよね。「何をするにも『イヤ!』」「どうしてうちの子だけ…」と、心も体も疲れ果ててしまう時期かもしれません。このブログでは、そんなイヤイヤ期の原因や子どもの心、そしてママやパパが乗り越えるための対処法や接し方のポイントを、専門家の解説や情報を交えながら紹介します。
【この記事の目次】
イヤイヤ期っていつ?なぜ起きる?原因を解説

イヤイヤ期は、一般的に1歳半頃から始まり、2歳、そして3歳頃にピークを迎えることが多いと言われています。この時期は、お子さんの発達においてとても重要な段階です。1歳半から3歳頃は、自分にできることとできないことを知る第2段階にあたります。この時期に何が起きているのか、いくつか理由を見てみましょう。
まず、自我が芽生えることが大きな原因です。赤ちゃんだった頃とは別の、「自分でやりたい」という気持ちが強くなってきます。大人の真似っこをしたり、見立て遊びをするようになったり、探索活動が盛んになったりと、自分で行動したい、世界を知りたいという欲求が増えてきます。
しかし、思うように体が動かせなかったり、やりたいことがうまくできなかったりします。また、まだ言葉で自分の気持ちや欲求を伝えることが難しいため、「イヤ!」という行動や言葉でしか表現できないのです。これは、他人の考えや気持ちを察する力がまだないことも関係しています。自分の内側から湧き上がる強い欲求と、それをうまく実行したり伝えたりできないもどかしさが、「イヤイヤ」という形で出ているのです。
この時期は認知機能も発達し、「やりたいこと」がわかるようになるからこそ、様々なことを自分でしたがります。これは、お子さんが一人の人間として自立に向かって成長している大切な過程なのです。
どうして「イヤ!」なの?子どもの気持ちと理由を理解する

イヤイヤ期の子どもが「イヤ!」と言うのは、単なるわがままや反抗ではありません。そこには様々な子どもの心の気持ちが隠されています。
・「自分でやりたいのに、うまくできない!」というもどかしさ
・「気持ちを言葉で伝えたいのに、伝えられない!」という歯がゆさ
・「大人に行動を止められていやだ!」という反発心
・「本当はこうしたいのに、どうしたいかわからない!」という混乱
・「疲れた」「眠い」「お腹すいた」といった体調や生理的な不快感
・「前もって教えてくれなかった!」という心の準備不足
このように、色々な気持ちや状況が「イヤ!」という行動に繋がっています。保育所では、子どもの気持ちを言葉で伝えられるように導くことが大切だと考えられています。お子さんの行動や表情から気持ちを推察し、「くやしかったんだね」「悲しかったんだね」「〇〇したかったんだね」と言葉にしてあげることで、感情と言葉がつながるようにサポートします。これを繰り返し行うことで、子どもは自分の感情をより具体的に言葉で表現できるようになり、イヤイヤ期も落ち着くと言われています。自分の気持ちを言葉にできたときには、「よく言えたね」と褒めてあげることも大切です。
ママも大変…イライラ、疲れの乗り越え方

お子さんのイヤイヤに毎日付き合うのは、本当に大変で、疲れてしまいますよね。ついイライラしてしまったり、強く叱ってしまったりして、後で自己嫌悪に陥ることも多いかもしれません。でも、それはママやパパの対応が悪いからではありません。イヤイヤ期は、それだけ子育ての中でもエネルギーを使う時期なのです。専門家への相談事例を見ると、子育ての悩みを抱え込んでいる方が多くいらっしゃることがわかります。
ママやパパ自身の心と体のケアも必要です。少しでも自分のペースで過ごせる時間を持つことが効果的とされています。30分でも1時間でも大丈夫です。例えば、お子さんが寝ている時間や、パパや他の家族に少しだけ時間を見てもらうなどして、自分の好きなことをしたり、リラックスできる方法を試したりするのも良いでしょう。深呼吸は簡単にできるリラックス方法で、筋肉の緊張を緩ませる効果があると言われています。
また、「自分だけじゃないんだ」「みんなも同じように大変なんだ」と知るだけでも、心が少し楽になることがあります。他のママやパパと情報交換をしたり、保育士や子育てサポートの窓口に相談したりすることも大切です。
具体的な対処法をご紹介!イヤイヤ期の接し方ポイント

イヤイヤ期の子どもの行動に対する具体的な対処法や接し方には、いくつかのポイントがあります。
1.感情と言葉をつなげる
これは先ほども触れましたが、お子さんの気持ちを大人が言葉にしてあげることで、子どもは自分の感情に名前があることを知り、言葉で伝える練習ができます。「くやしかったね」「悲しかったね」「〇〇したかったんだね」根気よく繰り返しおこなうことで、子どもは「悲しい」「くやしい」「ほしい」など、具体的な言葉で感情を伝えられるようになっていきます。言葉にできたら、しっかりと褒めてあげましょう!
2.自分で「できた」の自信をもたせてあげる
自我が芽生えた子どもは「自分でやりたい」気持ちが強くなっています。例えば、食事や着替えなど、自分でやってみたいのにうまくできないという状況で癇窻を起こしてしまうことがあります。そんな時は、安全な範囲でやらせてみて、少しでもできていることを褒めてあげましょう。親が手を貸しながらでも、「できたね。すごいね」と声をかけることで、達成感を覚え、次に繋がる意欲が生まれます。できなかったことを指摘するのではなく、できた部分に目を向けることが大切です。この「できた!」経験の積み重ねが、子どもの自己肯定感を育む上で重要になります。
3.選択肢を与える方法(選択方式)
親の意見を押しつけると、子どもは強く反発することがあります。そこで、子どもに少しだけ選択肢を与えるのが効果的です。着替えの時に、「この服を着ようね」ではなく「赤い服と青い服、どっちを着る?」と聞くことで、子どもは「自分で決めることができた」という結果を得ることができて、気持ちが落ち着くことがあります。
4.前もって予告する
大人は頭の中で予定を立てていますが、子どもはそうではありません。急に「さあ、行くよ!」と言われても、心の準備ができていないと行動に移せなかったり、「イヤ」と反応したりすることがあります。これから何をするのか、前もって“具体的”に伝えておくことで、子どもも心の準備ができます。まだ時間がわからなくても、「長い針がココに来たらお出かけだよ」などと視覚的に伝えるのも良いでしょう。これは「二つ先のアナウンス」とも呼ばれる方法です。
5.子どもの気持ちを受け止める(図星を言う)
子どもが癇窻を起こしている時、その気持ちを大人が言語化して語り掛けると、子どもは「分かってもらえてる感」を感じて安心し、気持ちが鎮静していくことがあります。「〇〇したかったのに、できなくてくやしいんだね」等、子どもの気持ちに寄り添って受け止める声かけは、子どもが自分の感情を理解し、コントロールしていく手助けにもなります。
6.時間がないときは、必殺のカウント方式!
どうしても急いでいるのに、子どもが動いてくれない…そんな時もありますよね。そんな時は、最終手段として「10数えるうちにできたらすごいね!」のように、カウントダウンを使う方法が紹介されています。これはあくまで時間がない時の対処法ですが、ゲーム感覚で子どもの行動を促せることもあります。
7.イヤイヤしがちなシーン別の対処法

日常生活の中で、特に「イヤイヤ!」が多いシーンがあります。それぞれのシーンに合わせた対処法も必要になります。
・お着替え:自分でやりたい気持ちが強くなるシーンです。
自分でやらせてみて、できたところを褒める。選択肢を与える。着替えをテーマにした絵本を読んでみるのも良いでしょう。
・お出かけからの帰り:「もっと遊びたい!」気持ちが強くなるシーンです。
帰る時間を前もって予告する。帰りの時間になったら声をかけ、子どもの気持ちに寄り添いつつ、「もうおしまいだよ」「また明日来ようね」と伝える。バイバイをテーマにした絵本もおすすめです。
・食事中:「食べたくない!」「遊びたい!」などが出るシーンです。
好きなものだけ食べようとしたり、座っていられなかったりすることもあります。無理強いせず、少しでも食べたら褒める。食事や食べ物をテーマにした絵本を読んでみるのも良いでしょう。
これらの対処法は、あくまで一例です。お子さんの性格やその時の状況によって効果は様々なので、色々な方法を試してみて、お子さんに合う接し方を見つけていくことが大切です。
子どもの成長を応援!自己肯定感を育む大切な関わり

イヤイヤ期は、お子さんが一人の人間として「私は私である」という感覚や、「自分はできる」「自分は愛されている」という自己肯定感を育む上で、とても大切な時期です。自己肯定感とは、自分自身のことを肯定的に評価し、ありのままの自分でいいと思える心の状態のことです。これが高いと、困難を乗り越える力や学習意欲、良い人間関係を築く力に繋がります。
乳幼児期の自己肯定感は、身近な人との愛着関係や、自分の行動を認められる経験を通して育まれます。特に、親や保育者といった信頼できる大人が、子どもの気持ちや行動をしっかりと受け止め、認めてあげることが重要です。例えば、子どもがイヤと主張した時に、頭ごなしに否定するのではなく、「〇〇したかったんだね」と気持ちに寄り添った声かけをする。自分の思いを出しても受け入れてもらえたという経験が、子どもの心に安心感と自分への自信を育みます。
また、自分の行動によって何かを成し遂げたり、人から必要とされる経験も、自己肯定感に大きく影響します。保育現場での研究では、子どもが手伝い活動を行うことが、自分はできるという感覚や、自分が人の役に立っているという心を育み、自己肯定感の育みに繋がることが示されています。例えば、雑巾がけを一緒にやるなど、大人の真似をしてお手伝いをしたがる時期に、安全な範囲でやらせてあげて、「助かったよ」「ありがとう」と感謝や褒める言葉を伝えることが大切です。うまくできなくても、「一生懸命やっているね」と過程を認めることも重要です。
自己肯定感は、乳児期から生涯にわたって大切な心の基礎となります。身近な人に愛され、認められる経験を多く積むことで、「自分はかけがえのない存在だ」「自分は何でもできる!」と思えるようになっていきます。
イヤイヤ期におすすめの絵本

イヤイヤ期の子どもとの関わりに役立つ絵本もたくさんあります。イヤイヤ期の子どもの気持ちに寄り添った内容や、日常の困ったシーンをテーマにした絵本は、親子で共感したり、楽しみながら対処法を学ぶきっかけになったりします。ここでは、絵本の一部をご紹介します。
・いやだいやだの絵本
「いやだいやだ!!」を連発する子どもに読み聞かせると、自分のことだと気づき、照れ笑いしたりする姿が見られたというコメントがあります。親子でイヤイヤぶりを客観的に見て、楽しむことができる絵本です。
・いるよね~!こんなこ
育児雑誌の読者の悩みを集めた「実用えほん」です。子どものイヤイヤシーンと、褒めてあげたいシーンが前後で描かれており、親子の会話が広がり、「いとおしさ倍増期」になると紹介されています。
・おばけのやだもん
「やだやだ」言う子にとりつくおばけのお話です。子どもにとっては少しドキッとするかもしれませんが、大人にとってはユーモラスで、大らかな気持ちになれるかもしれません。
・どうすればいいのかな?
お着替えがテーマの絵本です。くまくんが服を着るのに失敗しながらも、どうすればいいか考えてうまくなっていくお話です。子どもに「どこがおかしいかな?」「どうしたらいいかな?」と語りかけながら読むのがおすすめです。
・もうぬげない
服が脱げなくなった子どもの主張がコミカルに描かれたお話です。実際に服が脱げなくなってわめくお子さんが、この絵本のおかげで叫ばなくなったというコメントがあります。ヨシタケシンスケさんのユーモアあふれる絵本です。
・またあしたね
お出かけからの帰りのバイバイがテーマの絵本です。うさぎさんやりすさんたちと遊んだみこちゃんが、「またあしたね」とバイバイするお話です。子どもが自分でページをめくりたがるほど夢中になるというコメントがあります。
・ノンタンもぐもぐもぐ
食事がテーマのノンタン絵本です。ノンタンたちが何を食べているのかな?というお話で、食べ物への興味や認識を広げます。食が細いお子さんに読み聞かせたら、食事中に絵本を見せたり読んであげたりすると食べるようになったというコメントがあります。
・すっぽんぽんのすけ
お風呂上がりの「すっぽんぽん」をテーマにした、テンポの良いコミカルな絵本です。荒井良二さんの楽しい絵と一緒に、親子で笑って楽しめると紹介されています。
これらの絵本は、イヤイヤ期の子どもの気持ちに寄り添ったり、日常の困ったシーンを親子で楽しみながら乗り越えたりするヒントをたくさん与えてくれます。
イヤイヤ期を乗り越えて

毎日毎日「イヤイヤ!」の連続で、ママやパパは大変で疲れてしまいますが、イヤイヤ期は子どもが自立に向けて大きく成長している証拠です。信頼できる相手に自己主張をぶつけることで、他者との関わり方や自己主張の出し方、コミュニケーション方法を学んでいます。
多くの子どもは3歳頃までにイヤイヤ期を自然と卒業していくと言われています。この大変な時期を少しでも楽に乗り切るために、
・子どもの気持ちや発達を理解する
・子どもの感情を言葉で受け止める
・自分で「できた!」の経験を与える
・選択肢を与える
・前もって予告する
・子どもと一緒に楽しめる絵本などを活用する
・そして、何より大切なのが、ママやパパ自身の心と体をケアすることです。少しの時間で も自分の好きなことをしてリラックスしたり、周りの人やサポートに頼ったりする。
イヤイヤ期は「魔の2歳児」とも言われますが、子どもの成長にとって必要な時期です。この時期を乗り越えることで、子どもは自分への自信と、自分は愛されているという安心感を心の中に育んでいきます。ママたちが、心穏やかに、そして少しでも笑顔でこの時期を乗り越えられるよう、この記事が何かのお役に立てれば嬉しいです。一人で抱え込まず、大変な時は保育園も含めて、いつでも周りの人を頼ってください。
今日のコラムが、少しでも心の荷物を軽くしたり、新しい視点のヒントになればうれしいです。
次回もぜひ読みに来てくださいね。
仁和会 理事長 松屋




