
仁和会理事長の松屋です。子育ては、想像以上に笑いがあって、想像以上に悩みも多いもの。このコラムでは、保育現場や家庭での日常から感じたこと、役立つ情報、ちょっとした気づきをお届けします。
久しぶりに会ったおじいちゃんやおばあちゃんに抱っこされた途端、赤ちゃんが大泣きしてしまう。さっきまで笑っていたのに、知らない人を見た瞬間に固まって、顔をこわばらせる。そんな場面に戸惑ったり、焦ったりした経験のある親御さんは多いと思います。「せっかく会いに来てくれたのに申し訳ない」「自分の接し方や育児のやり方が悪いのかな」と、困ってしまうこともあるかもしれません。せっかくの機会に泣かれると、気まずいうえに、少し落ち込んでしまうこともあります。でも、心配しなくて大丈夫です。人見知りは、親の育て方のせいでも、愛情や慣れが足りないせいでもありません。身近な人の顔や声をしっかり見分けられるようになったからこそ起こる、成長の過程で見られる行動です。この記事では、人見知りがいつ頃始まっていつ頃落ち着くのか、その理由や原因、具体的な対応や対策を順番に紹介します。気になるところから読んでみてください。
【この記事の目次】
子どもの人見知りはいつから?いつまで続く?

子どもの人見知りの始まりは生後半年頃が多く、1歳半から2歳頃にかけて少しずつ落ち着いていきます。
月齢ごとの目安
人見知りが始まるのは生後6〜9か月頃が多いといわれ、世界中の赤ちゃんがほぼ同じ時期に経験する現象です。早い子だと4〜5か月頃から、知らない人の顔をじっと見つめたり、表情がこわばったりといった兆しが出てきます。6〜9か月頃になると人見知りが本格的になり、知らない人に抱っこされて泣いたり、親の姿が見えないと後を追ったりすることが増えてきます。一方で、2歳を過ぎてから始まる子もいて、時期に大きな幅があるのも特徴です。いちばん強く出るピークも、7〜9か月頃とする見方もあれば、10か月〜1歳前後とする見方もあります。身近な大人への信頼がぐっと深まると同時に、知らない人への警戒心も強くなる時期です。その後、1歳半から2歳頃にかけて、少しずつ落ち着いていきます。言葉の理解が進んで初めての人にも慣れやすくなり、祖父母や保育士など、親以外に安心できる人も増えていくからです。とはいえ、「何歳で終わる」と完全に言い切れるものではありません。

個人差が大きいことを知っておく
人見知りの時期や程度には、一人ひとり大きな個人差があります。早くから敏感な子もいれば、1歳を過ぎてから始まる子、ほとんどしないまま大きくなる子もいます。激しい泣き方をする子がいる一方で、ケロッとしている子もいて、出方はさまざまです。保育園でも見られますが、同じ月齢でも反応は一人ひとり全く別です。「もう1歳を過ぎたのに、まだ続いている」と焦る必要はありません。時期の数字はあくまで目安なので、周りの子と比べなくて大丈夫です。
赤ちゃんが人見知りをする理由・原因とは?

赤ちゃんが人見知りをするのは、心と頭の働きが順調に育っているからです。なぜ泣いてしまうのか、その理由を見ていきましょう。
身近な人と知らない人を区別できるようになった
人見知りが起こるいちばんの理由は、人を見分ける力が育つことです。生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.01ほどしかありませんが、生後6か月頃には0.1ほどまで育つそうです。見る力や覚える力が高まるにつれて、人の顔を認識できるようになっていきます。生後半年ほど経つと、いつも一緒にいる家族をしっかり見分け、「大好きな家族」と「見慣れない人」の区別もつくようになります。普段から自分を守ってくれる人が、特別な存在になっていくのもこの頃です。つまり人見知りは、身近な大人との信頼関係ができてきた証拠です。「いつもと違う」ことを理解できるようになった、とも言えます。同じように、初めての場所で泣く「場所見知り」をする子もいます。これも、場所の違いが分かるようになった成長の表れです。

「近づきたいけど怖い」という心の葛藤
研究では、人見知りは単に相手を怖がっているだけではないことも分かってきました。赤ちゃんの心の中には、「あの人に近づいてみたい」という興味と、「知らない人だから怖い」という不安が同時にあります。この2つの気持ちがぶつかって揺れている状態が、人見知りです。人見知りの強い赤ちゃんほど、相手の顔をじっと観察する傾向もあるそうです。ただ逃げたいわけではなく、相手に関心があるからこそ、気持ちが揺れ動きます。好奇心と警戒心の両方が育ってきている、ということです。
生まれ持った気質と経験で強さが変わる
人見知りの強さや表し方は、まず生まれ持った気質によって変わります。音や光、人の表情に敏感なタイプの子は、不安を強く表に出すことが多いようです。一方で、おおらかな気質の子は、人見知りをあまりしないこともあります。それに加えて、家族以外の人と接する機会の多さも、強さに影響する要素です。生まれ持った気質とそれまでの経験が合わさって、強さが変わってきます。どちらが良い悪いではなく、その子の個性です。生まれ持った性格や家庭の環境に合わせて、焦らず付き合っていきましょう。
人見知りは成長の証。しない子も心配しすぎなくて大丈夫

人見知りは、信頼する大人との絆が育った証です。しないことだけで、心配する必要もありません。
保育園の保育の土台となる国の指針の解説にも、同じ考え方が書かれています。人見知りは特定の大人との愛着関係が育っている現れで、子どもはその絆を拠りどころに、周りの大人へと関わりを広げていく、という考え方です。なので私は、人見知りをする子を見ると「心がしっかり育ってるな」と思います。一方で、「うちの子は全然人見知りをしないけど大丈夫?」という声も聞きます。でも、人見知りをしないことだけで、発達の遅れとは判断できません。知らない人に抱っこされても平気なのは、おおらかな気質の表れであることも多いです。好奇心が旺盛だったり、普段から多くの人と関わる生活をしていたりする場合もあります。誰にでもニコニコと近づけるのも、その子らしい個性であることがほとんどです。「人見知りする子は賢い」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、はっきりした根拠はないと言われています。するかしないかも含めて、出方は子どもによってバラバラです。しないからといって、心配しすぎることはありません。
人見知りする子への対処法

人見知りをする子には、まず親が安心できる存在でいることが、いちばんの対策です。赤ちゃんが「守られている」と感じられることを、何より大切にしましょう。
無理に抱っこさせない・目をのぞき込まない
知らない人や久しぶりに会う相手に泣いているときは、無理をしないでください。泣いている子を、無理に他の人の腕に渡さないことが大切です。不安なときに知らない人へ渡されると、怖さがかえって大きくなります。まずは親が抱っこした安心な状況で、相手と短く話してみましょう。 相手が親しみを込めて顔を急に近づけたり、目をじっとのぞき込んだりするのも、赤ちゃんにとっては緊張のもとです。人見知りの強い赤ちゃんほど、目が合うと不安が強くなりやすいといわれています。「最初は目線を少し外して接してね」と伝えておくのがおすすめです。緊張しているときに一生懸命あやすのも逆効果になりやすいので、構いすぎずに様子を見て、慣れるのを待ちましょう。かといって、人に会う機会をすべて避ける必要はありません。無理に会わせて克服させようとせず、短い時間から少しずつ。公園や子育て支援センターなど、見慣れた場所で会うのも一つの方法です。

親が笑顔で相手と話す姿を見せる
赤ちゃんは、親の表情や雰囲気を驚くほどよく見ています。親が不安そうな顔をしていると、赤ちゃんも「あの人は危ないのかな」と警戒しがちですが、親が笑顔で楽しそうに相手と話していれば、ホッとします。身近な人の表情や声の様子から、相手が安全かどうかを判断しているからです。相手の前で泣いてしまっても、慌てずにしばらく笑顔で見守ってみてください。親の笑顔を見て安心し、泣き止むこともあります。「この人はママやパパの仲良しなんだな」と受け止められるように、周りの人と接するときは、笑顔で会話する姿を見せてあげましょう。大人のリラックスした笑顔が、子どもにとっていちばんの安心材料になります。
「いま人見知りの時期なんです」と先に伝える
会う相手には、前もって一言伝えておくのもよい方法です。「今ちょうど人見知りの時期なんです」と先に言っておけば、相手も理由が分かるので、泣かれてもショックを受けずに済みます。成長の過程で起こる自然なことだと、周りにも知ってもらえます。外出先で、知らない人に話しかけられたときにも使える一言です。「少しすると落ち着くので、そっと見守ってください」と添えておくのもおすすめです。周りの大人がゆったり待ってくれると、子どもも緊張をほぐしやすくなり、親自身も気兼ねが減って、わが子にゆったり向き合えます。
パパや祖父母に人見知りするときの対策

パパや祖父母への人見知りも、焦らず少しずつ慣れていけば大丈夫です。仕事で帰りが遅いパパや、たまにしか会えない祖父母に泣かれて、「家族なのにどうして?」とショックを受けることもあると思います。でも、これは赤ちゃんにとって自然な反応です。会う時間が少なく、まだ慣れていないからこそ起こります。まずはママと相手が、楽しそうに話す姿を見せましょう。大好きなママと笑い合っている人なら、赤ちゃんも安心しやすくなります。急に触ったり抱っこを迫ったりせず、子どものほうから近づいてくるのを待つのがコツです。普段からテレビ電話や写真で顔と声を見せておくのも、おすすめです。「この顔とこの声の人は安心」と、少しずつ覚えていきます。祖父母とは、家の中より、お散歩など外で会うのもよい方法です。外ならほかの刺激も多く、祖父母だけに意識を向けずに済むからです。また、親が気を遣いすぎるとその緊張は赤ちゃんにも伝わるので、親自身もリラックスして過ごしましょう。パパは、大変かもしれませんが毎日5〜10分のお世話を続けてみてください。着替えやおむつ替え、絵本や遊び、お風呂など、短い触れ合いで十分です。最初はママが抱っこしたまま、パパが声を出して話しかけるところから始めます。「家族だから懐くはず」と思わず、新しく知り合うくらいの気持ちで接しましょう。
保育園デビューと人見知り

保育園での人見知りも、信頼できる先生がそばにいることで、少しずつ安定していきます。新しい環境では、ママやパパと離れるときに大泣きすることがよくあります。知らない大人や、たくさんのお友達に囲まれるので、無理もありません。保育の現場では、安心できる保育士がそばにいると子どもの気持ちが安定する、と考えられています。だからこそ、担当の先生と少しずつ絆を深めていくことが大切です。入園前に、親以外の大人と少しずつ関わっておくのもおすすめです。一時保育や子育て支援センターで、家族以外の人に会う経験を重ねておくと、入園後の負担がやわらぎやすいといわれています。赤ちゃんのペースで、少しずつ広げていけば十分だと思います。最初は毎朝、寂しくて泣いてしまう姿が見られることもあります。それでも先生の抱っこや声かけ、優しい対応によって少しずつ慣れていきます。ご家庭と園で様子を伝え合いながら、一緒に見守っていきましょう。少しずつ、園でも安心して過ごせるようになっていきます。
1歳・2歳を過ぎても続くとき・相談の目安

1歳・2歳を過ぎても人見知りが続く子はいますが、不安が強いときは相談しましょう。2歳頃になっても、知らない人の前で緊張が続く子もいます。気質と経験の組み合わせによるもので、多くは問題ないそうです。社会性が育つスピードには、もともと大きな個人差があり、続く時期の違いは、その子の個性の違いでもあります。人見知りをする子は、慎重に物事を判断する子が多いともいわれています。保育園や幼稚園に入ってから、ぐっと落ち着いていく子も多いようです。無理に人と関わらせず、お子さんのペースを大切にしてあげることがいちばんです。ただ、人見知り以外に気になる様子がある場合は、相談してみましょう。たとえば、次のような様子が続くときです。
・あやしても、ほとんど笑わず表情が乏しい
・目が合いにくい
・名前を呼んでも振り向かない
・親の姿が見えなくなっても、後を追う様子がまったくない
・集団での生活が、極端に難しい
こうした様子は、乳幼児健診や小児科で一度相談してみると安心です。毎日激しく泣かれて、心が折れそうだと感じることもあると思います。そんなときは一人で抱え込まず、医師など専門家の視点をもらってみてください。それだけで、気持ちが軽くなることもあります。同じ年頃の子を持つ親同士で話すのも、心強いと思います。不安が強いときは、園や小児科医や地域の子育て支援センターに相談を。親が少しでも楽になることが、子どもにとってもいちばんです。
まとめ

最後に、子どもの人見知りのポイントを一覧でまとめます。
・人見知りは生後6〜9か月頃に始まる子が多く、時期には大きな個人差がある
・人を見分ける力と、「近づきたいけど怖い」気持ちが育った成長の証
・人見知りをしないことだけで、発達の遅れとは判断できない
・無理に抱っこさせず、親が笑顔で相手と話す姿を見せる
・パパや祖父母には、テレビ電話や短い2人の時間で少しずつ慣れてもらう
・目が合いにくいなど気になる様子があれば、健診や小児科で相談を
人見知りで泣かれると、抱っこしている親のほうも疲れます。でもそれは、子どもにとって親がいちばん安心できる場所になっている証拠です。成長のペースは一人ひとり違うので、周りと比べなくて大丈夫です。大変なときは、保育園や周りの人を遠慮なく頼ってください。
今日のコラムが、少しでも心の荷物を軽くしたり、新しい視点のヒントになればうれしいです。次回もぜひ読みに来てくださいね。
仁和会 理事長 松屋哲雄





